ヅカと、髪。

宝塚ファン歴20年超の美容編集が送る、盛大な公私混同ブログ。

ヘア記事★綺咲愛里ちゃんのショートヘアが美しい理由をプロが本気で解説する★ESTRELLAS(エストレージャス)~星たち~

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以下、本文です。

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みなさまごきげんよう! 今日は『ESTRELLAS(エストレージャス)~星たち~』のお話をしていこうと思います。

kageki.hankyu.co.jp

スペイン語で星々を意味するエストレージャス。人々の心に輝きを届ける満天の星々を星組生にたとえ、“誰もが星のように光を与えることができる”というテーマのもと、星組エストレージャスたちが、生き生きとした歌声や躍動感溢れるダンスをお届けする作品。爽やかな高揚感を放つレビューにご期待ください。

宝塚らしく優美で繊細なショー。こちらも『霧深きエルベのほとり』と同じく、評判は上々でとてもうれしい限りです。1月2日にはNHKでも中継されましたので、ご覧になった方も多いかもしれません。

いろんな名場面があった中で、星組ファン内外問わず、結構な勢いで話題をかっさらっているのが…!

われらが主演娘役 綺咲愛里ちゃんがショートヘアで登場したフィナーレナンバー♡

なんたるかわいさ。

なんたる色気。

日本中に激震が走りました(真顔)

紅ゆずるさんも

舞台稽古中うれしくなって、ショートなん!?って言いに行ったもんなあ(笑)。

と、NOW ON STAGE(タカラヅカスカイステージ内番組)でおっしゃっていたほど!!

 

これ、もちろん本人の天井知らずの可愛さは論ずるまでもないとして、わたしがタカラヅカを20年見てきた中でも、トップクラスのショートカツラのクオリティでした。

  • カツラそのものがとても高いカット技術で切られていること
  • 圧倒的素材(顔体の見目かたち)のよさでなければ「娘役ヘア」にはならないこと

この2点を中心に、髪の毛の専門家として鼻息荒く紹介していきたいと思います。久しぶりのヘア記事です♡

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星組公演『ESTRELLAS(エストレージャス)~星たち~』2階席上手観劇時撮影。

 

美容師免許を持たぬが、ちょっと髪にはうるさくてですね…

ちなみにわたしは、美容師ではありません。ヘアメイクでもありません。

わたしは何者かというと、美容師さん向けの業界誌をしこしこつくる出版社のサラリーマン編集です。美容師さんのカットやヘアカラー、パーマやシャンプーなど、あらゆる技術を解説する雑誌や書籍に携わっています。ですから、“手”に関しては、研修でワンレングスを切ったことはあるよ…という程度ですが、“目”はそれなりに鍛えてまいりました。

たとえば、過去にこんな連載もしておりまして↓

www.kamishobo.co.jp

自分が切られているヘアスタイルのプロセスを瞬時に取材し解説するというマニアックな連載……(結構お役立ちだからぜひ読んでみてください。自信を持って紹介できる美容師さんだけに取材したものですので!)

あと、もしみなさんにお会いしたとして、パッと髪型を見れば大体どこから切った髪型かわかります。つまり、担当しておられる美容師さんの腕もある程度…。肩上レングスでしたら、切り立ての状態で、2週間くらい経ったらどこが扱いづらくなるかもおおよそ予言できます。

そんな「髪の毛オタク」が仕事で使う知識を総動員する記事でありますからして、そもそものの目的は「人目をはばからずあーちゃんを愛で倒す」口実なんですけど(キモ)、それなりにお役に立つかと思います★★

 

綺咲愛里ちゃんのショートヘアってこんな感じ

 説明しやすいように、ざっと描かせていただきました。

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©わたし。ざざっとデッサンしました。わかるよね。

イカワイイ!マジでかわいい!こっち向いて!(煩)

……描くって、この場合結構大事なプロセスで、毛先の落ちる位置・重なる位置を再確認できるのです。ただの性癖ではない。多分。

 

構造・毛先の位置を分析してポイントを整理しました↓

 

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  1. 【正しい】フォルム設定
  2. 【モードでありながら女らしい】前下がりライン
  3.  ショートはえり足がすべて
  4.  ショートの色気は眉間か頬でつくられる

この4本立てで、あーちゃんをこねくり愛でまわし…いえ、分析していきたいと思います。ちなみに、これらは【ごくごくオーソドックスなショートヘア】の押さえどころでもありますので、同じくらいの長さ形の方は、オーダーするときに参考にしてみてください。

 

①正確なウエイト設定のツーセクションスタイルである

髪型の最も大切な要素は【形(フォルム)】です。見出しにある【ウエイト】とは直訳すると重さの意味ですが、髪型の要素として使う場合は【丸みと奥行きのピーク】(線①)を指します。要は、髪の重なりで後頭部のせり出しをどう演出するかということになるのですが…。

「正確なウエイト設定」、つまり正しい後頭部の丸みと奥行きとは何か。

それは

  • 鼻や眉から後頭部の距離が長く立体的な顔立ちに見えること
  • 首が長く見え、頭身バランスも良く見えること

この2つの最大公約数的ポイントが、正確なウエイト設定です。

このスタイルの場合は、鼻の高さより少々上がウエイトになっていますので、モードすぎずコンサバすぎず、ごくごくオーソドックスな場所で、つまり誰もが美しいと感じる場所にウエイトがつくられています

ちなみに、ウエイトは高くなればなるほどシャープでモードな印象になり、低くなるとコンサバティブで地味な印象になりやすいです。また、ウエイト位置を高くするには「グラデーション」「レイヤー」といった頭頂から裾にかけて長短をつける切り方の組み合わせが必要になってきます。大変残念な話ですが、今多く支持されている美容室の売れっ子スタイリストさんでも、この切り分けや組み合わせが巧みな方は非常に少なく、我々もとてもそこを危惧しているところです。なのでこのカツラを切った人は超すごいです。(公私混同で情緒不安定)

②シャープな前下がりラインにレイヤーをかぶせて女性らしい印象に

この項目は、①で華麗にスルーした「ツーセクションスタイル」の解説もしていきます。多分見てもナンノコッチャという図なのですが、以前Twitterでアップした手描きのイラストを使って説明していきますね。

 

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ヘアスタイルから展開図を描き起こす

後から見てトップのグラの角度とか前髪が1スライスカットでないとか、ちょっと訂正したいところはあるんですけどちょっとここでは訂正を省略します。そもそもベースデッサンの時点でちょっとトップが長いです。すみません。

ここで一般消費者の読者の皆さんに覚えて帰ってほしいのが「アウトラインを女性らしく残しつつ、めちゃくちゃ短く切った内側の髪の毛の上からかぶせてるよ」ということです。これ、今日1大事です。

また、逆にわたしはこの業界にどっぷり浸かりすぎて一般の方がどれくらいの認識があるかわからないので教えてほしいのだけれど、髪型というのは、頭の中でたくさんの段差(レイヤー)が入っていても、その段に突如緩急が入っていても、それが計算されて正確にデザインされていれば乾かすだけで決まるし動いても形状記憶で元に戻るんです。これねー、ほんと名の売れたライターさんでもわかってない人多いです。「レイヤーはパサついて扱いにくい」とか「セニング(削ぐこと)は傷む」とか十把一絡げに知ったような口を叩く人がいますが、正しく使えば傷みませんし形状記憶です。それはただ下手なだけや。レイヤーが入っていると少しスタイリング剤でテクスチャーを与えてやれば、めちゃくちゃ動いてコテいらずなんだよね。

話が逸れましたが、この場合大切なのは、耳周りを中心にびっくりするくらい短い毛で構成されていることがポイント。その上から、耳とかにかかる長い毛がかぶさっているような格好です。これは、耳周りやハチ(眉尻からトップに垂直に上がっていった頭のカド)に毛量がたまりやすいので、普通に段を繋げていくと横に平べったいフォルムになってしまうのを防ぐためです。①でご説明した【奥行き】に加えて、髪型づくりで大切なのは「頭を四角く見せないこと」。なので、横ではなく縦に縦に形を補正していく精密な作業が必要です。思い切ってカットベースでここの長さをとるという方法で、骨格調整をして、あーちゃんのただでさえ小さい頭をより小さく見せるためのデザインです。

 

そしてさらに「前下がり」とありますが、これは【後ろが短く前が長いデザイン」のことです。これは、顔まわりに髪を残して隠すことでミステリアスに見え、かつウエイトが高くなることで首が長くなって美人度が上がるために【モード】とか【クール】というイメージになるのだと思うのですが、あーちゃんのこのヘアの場合はそれが軽減されて【ナチュラル】【かわいい】に振れていることに注目したい

これが、表面のレイヤーの力です。画像↑でいうと、頭頂にそびえ立つ2本の三角。レイヤーとはつまりLayer、重ねることで、1つのパネル(髪を切るためにつかんだ時の単位)内での長短がつく切り方です。長短がつくということは、髪の重なりが薄くなります。なので、下の髪に柔らかくなじむ。前下がりのウエイトラインはそのままに、ラインのきつさがボケる。美容業界誌では、このプロセスを【カドを取る】といいます。言い得て妙だなあ、と好きな表現。これがかぶさっていることが、前下がりのクールなショートにも関わらず、絶妙に女っぽい秘訣です。

シニヨンの上にかぶっていると思えない襟足のフィット感

ショートの押さえどころは①②で9割9分9厘でして③に関しては、美容師さんとしては最低限の押さえどころ(だと信じている。毒)であり、ここからは綺咲愛里という素材そのものの奇跡を讃えるに留まりたい。「襟足が浮かずになじんでいる」理由は展開図(画像↑)通り、しっかり繋げたレイヤーの賜物です。これが人頭ともなりますと、人によって襟足の生えグセに左右差があったりして、その度に上手な美容師さんは涼しい顔しながらも、イングラやセニングを駆使して浮かないように一生懸命になってくれる人が、多い(と信じています)。このカツラも、その賜物です。タカラヅカの娘役さんのショーのカツラって、絶妙にいつもここ浮いてるんですよ。ですが、あーちゃんのこのヘアは浮いていない。これは、担当カッターさんはもちろんのこと、この襟足のフィット感にあーちゃんのセンスと美に対するこだわりが詰まっていると思う。

きっと、鬼畜のように突き返してここセニングさせたんだろうな、あーちゃんに何度もダメ出しされたい謎の衝動にかられ、ついついウイッグ切りたくなりました。そんな魔性の襟足(違)。

また、これは最後にもう一度強調しますが、あーちゃんの頭そのものに奥行きがあるので襟足が浮かないように見えているという要因も手伝って、襟足1つからあーちゃんの最強性が垣間見えるというなんとも素晴らしい襟足なのです。襟足すばらしい。

④ショートの味付けは【残す髪】が物を言う

この項目に関しては、今もわたしの髪を切ってくださる先生、このお方の受け売りなんですけど

www.kamishobo.co.jp

頬骨、眉間、襟足、全部切れば個性的になるし、全部残せばコンサバになる。 どこを残してどこを切るかのバランスが重要。

という格言を、常々もらっていまして、もうそれはわたしが技術を書くときの血と骨と肉になっています。本当にそうなんだもん。わかりみが過ぎる。

今回のあーちゃんショートに関してはこうです。

  • 頬骨 スッキリ出す(レイヤーで長短の激しいスタイル)
  • 眉間 動けば見える
  • 襟足 首にぴったり沿わせて残している

Twitterのフォロワーさんの中に「動くと前髪が上がったり降りたりするのが新鮮で色っぽい」と書かれていた方がいたが、もうそれはきっと狙い通り。殊に娘役さんにおいて、前髪がここまで動くスタイルはあまり見たことがありません。

そして、それを「ただのウザい前髪」でなく、色っぽい髪の動きに昇華しているのは、頬骨をスッキリ出す顔周りのハイレイヤー(極端な長短)なのです。

 

①から続けて申し上げてきていますが、このポイントもまた、非常にオーソドックスなショートヘアの押さえどころでもあります。

 

「一般人」にオススメなスタイルということは…

さてさて、長々と①〜④まで、あーちゃんを愛でこねくり回してまいりました(居直り)

何度も申し上げた通り、そのショートの完成度は高いながらも【非常にオーソドックスなショートヘア】を、とにかく基本に忠実につくっていったらああなりましたというスタイルなのです。特にね、わたしは日々提唱している『一般人ほどショートがおしゃれ!』というテーマがありまして、特にアラサー以上の体や肌がたるんできた人ほどショートにすると、多少のアラは見逃してもらえるよと思っているんですが。なぜなら、ショートって、先ほどまでもご説明したように頭や顔の形を髪の長短でたくさん補正できる魔法のような髪型だからです。ショートカット1つで背だって高く見えるし、なんなら痩せて見えます。

だから、世にはびこる「美人だからショートが似合う」「スタイルがいいからショートが似合う」は、ほぼ嘘です。

思い切って似合うショートにしたら今までより綺麗に見える。これが、正しいショートヘアの認識です。

 

ただ、ここがミソで、あーちゃんのショートカツラはあくまで「オーソドックスなショートヘアの正解中の正解」だったということです。エッジや個性、華やかさを足さず、ただただ均整を取ることを求めたスタイル。専門的に「エッジを出す」とは、顔周りにラインを残したり、極端に前髪を短く切ったり。もしくはフィンガーウエーブなどでカールをあしらったり。そんなことが考えられます。

が、今回の綺咲愛里ちゃんのショートヘアは、まったくそういった“装飾”がないのです。ただただ、ただでさえ良い形の頭と均整の取れた頭身を補強することに徹底した、削ぎ落とし切ったショートカツラ。

 

元々頭が丸く奥行きがあるタイプの彼女には、そこにいくらでも【足し算】する選択肢もあったのに、あえて、いわゆる【超普通に美しいショートカット】を被って娘役群舞の三角の頂点に立ったこと……

 

こんなシンプルな【普通の装飾】をさらりと着こなして【娘役仕様】に格上げしてみせる。

それこそ、彼女自身が、本物の素材を持った娘役オブ娘役だということを証明していると感じます。

 

「どんなデザインも、綺咲愛里の美しさの前には、もはや邪魔」

 

わたしの脳内で、そんな新しい格言すら生まれた今夜……

ぜひ、そんな異次元な彼女の美しさの中からも、我々一般人が日々を少しだけ快適で豊かに過ごす《髪遊びの知恵》、その奥深さが伝わり広まっていけば幸いです。

 

ご静聴ありがとうございました。

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